
前回、宿題をひとつ持ち帰りました。空き家に貼る「貸家札」は、なぜ斜めに貼るのか。
結論から言います。分かりませんでした。
宿題、初回から未提出です
言い訳をさせてください。辞書は2冊引きました。どちらにも「斜めに貼ることが多い」とは書いてあります。ところが「なぜ」は、どこにも書いていないのです。ほかの資料も当たりましたが、確かな理由は見つかりませんでした。
学校なら廊下に立たされるところです。ただ、分からないことを分かったふりで書くよりは、ましだと思っています。引き続き調べます。
300年前の「空室あり」
分かったこともあります。
貸家札は、少なくとも300年前にはありました。享保3年(1718年)の近松門左衛門の浄瑠璃『博多小女郎波枕』に、空き家になった家に「紙のかしや札」が貼られている場面が出てきます。
写真も間取り図もない時代です。札は「ここ、空いてます」の合図でした。いまの「空室あり」の看板と、やっていることは同じです。

たぶん、目立ちたかった
ここからは私の推測です。
まっすぐ貼った紙は、景色に埋もれます。斜めに貼ると、人の目が引っかかります。スーパーの値引きシールが、少し曲がっているほうが目に入るのと同じ理屈です。
300年前の人も、「どうすれば気づいてもらえるか」を考えていたのかもしれません。いまの不動産広告が「新着」「おすすめ」の印をつけるのと、発想は変わりません。
繰り返しますが、これは推測です。本当の理由をご存じの方、ぜひ教えてください。
札を見つけても、まだ借りられない
札を見つけたら、すぐ住めたわけではありません。江戸で家を借りるには、身元を保証してくれる人が必要でした。「店請人(たなうけにん)」と呼ばれ、親類や同郷の人が引き受けることが多かったそうです。
いまは保証会社がやっている役目を、人が引き受けていたわけです。頼める相手がいなければ、札の前で立ち尽くすしかありません。江戸も、なかなか世知辛い。
道具は変わった。やることは同じ
歩いて札を探すのが、スマホの検索に。店請人が、保証会社に。道具はすっかり入れ替わりました。
けれど「空きを見つける」「信用を確かめる」という手順は、300年前とほとんど同じです。そう考えると、いまの審査や書類の多さにも、少しだけ優しくなれる気がします。少しだけ、です。

次回は、この「保証人」の話をもう少し掘ります。頼める人がいなかったら、どうしていたと思いますか?
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