
前回、保証人は「借金を抱えていないこと」まで請け負った、と書きました。書いたあとで気になりました。借金がないなんて、どうやって調べたのでしょう。信用情報の会社も、ネットもない時代です。
大家さん、近所まで聞き込みに行く
興津要さんの『大江戸長屋ばなし』によると、江戸の大家は、借りたい本人はもちろん、家族全員の経歴、性格、素行、健康状態まで細かく尋ねたそうです。
それだけではありません。それまで住んでいた家の近所まで出かけて調べ、怪しい点があれば断りました。
いまで言えば、申込書を出したら、大家さんが前のアパートのご近所を一軒ずつ回っていた、という話です。ほぼ探偵です。個人情報という考えかたは、まだ影も形もありません。

「前の大家に聞け」は、お上の決まり
これは大家の趣味ではありませんでした。
享保15年(1730年)の江戸のお触れには、前の家主に確かめ、問題のない者なら貸してよい、という趣旨の決まりがあります。新しく借りる人については、出どころを確かめよ、とも書かれています。さかのぼって慶安3年(1650年)のお触れでは、保証人をよく吟味して、確かな人を立てさせるよう命じています。
聞き込みは、お上公認の手順だったわけです。
逃げられたら、大家の財布が痛む
なぜ、そこまでしたのか。理由ははっきりしています。
借り手が借金を残して姿を消すと、その借金は大家と保証人で肩代わりする建前でした(片倉比佐子『江戸住宅事情』)。審査が甘ければ、自分の財布に返ってきます。必死にもなります。
いまの保証会社の審査が細かいのも、理屈は同じです。立て替えるのは自分たちだからです。
調べかたは変わった。見ているものは同じ
江戸は、聞き取り、近所の評判、前の大家、保証人。令和は、申込書、収入の証明、信用情報、保証会社。道具はすっかり入れ替わりました。
けれど、確かめたいことは変わっていません。「この人は、家賃を払い続けてくれるか」。それだけです。
審査で書類をたくさん求められると、疑われているようで良い気分はしないものです。でも、近所に聞き込みに来られるよりは、だいぶ穏やかです。

なお、今回の話は、江戸の暮らしを扱った書籍の記述を、それを引用している研究ブログで確認したものです。原本に当たれたら、あらためて報告します。
次回こそ、長屋の中へ。広さは、たたみ何枚分だと思いますか?
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