
落語に出てくる長屋の大家さん。店子(たなこ)を叱ったり、世話を焼いたり、町内の顔役です。当然、長屋の持ち主だと思っていました。違いました。
正式な名前は「家守」
江戸の大家さんは、正しくは「家守(やもり)」といいます。辞書にはこうあります。地主・家主に代わって、その土地や家屋を管理し、地代や店賃を取り立てた者(デジタル大辞泉)。
持ち主は別にいて、大家さんはその代理でした。山川の『日本史小辞典』には、「家守給」を得ていた、とあります。つまり、給料をもらって働く管理人です。
仕事は、家賃の集金だけではない
家守の仕事は、集金だけではありませんでした。自身番という町の番所に詰めて、町の公の用事も務めています。持ち主に代わって、町の役目まで引き受けていたわけです。
店子との関係を、山川の辞典は「擬制的親子関係」と書いています。むずかしい言葉ですが、落語でおなじみの「大家といえば親も同然、店子といえば子も同然」のことです。
江戸編③で、大家さんが入居前に近所まで聞き込みに行った話を書きました。親代わりになるのですから、相手を選ぶのも当然です。

意外な収入源
給料のほかに、もうひとつ収入がありました。長屋の共同便所にたまった屎尿(しにょう)です。
江戸では、これが貴重な肥料でした。近郊の農家が買い求め、その代金は家守の収入になったそうです(『江戸吟味問答控』江戸文化歴史検定 公式解説集)。
入居者が多いほど、収入も増える仕組みです。満室にこれほど熱心になれる理由は、ほかに思いつきません。
いまで言えば、管理会社
持ち主に代わって、家賃を集め、建物を見て、入居者の相談に乗る。いまなら管理会社の仕事です。
私も、オーナーさんから物件を預かって管理する仕事をしています。家守は、江戸時代の同業者ということになります。町の役目も、親代わりも、肥料の販売も、いまの管理会社にはありませんが。
部屋を借りるとき、窓口になるのは持ち主ではなく管理会社、ということはよくあります。「大家さんと管理する人は別」というしくみは、江戸からの伝統でした。

なお、今回の内容は、辞書・事典の記述と、検定の公式解説を紹介する記事で確認したものです。
次回は、長屋の「共用部分」。井戸とごみ溜めの話です。
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